年末調整で残業代は含まれる?

結論として、残業代は年末調整の対象ですが、還付金が大きく減る心配は不要です。この記事では、その仕組みを分かりやすく解説。また、「未払い残業代」や「書類作成の残業代」といった特殊ケースにも言及します。さらに、毎年20時間以上の残業が発生しがちな担当者向けに、明日から実践できる業務改善のヒントを3つの解決策として具体的に提案します。

年末調整と残業代の基本

残業代は年末調整の対象となる「年収」に含まれます

年末調整の計算を行う際、その基礎となる「年収」に残業代が含まれるのかという点は、多くの従業員や担当者が抱く基本的な疑問です。結論として、残業代は年末調整の対象となる年収に明確に含まれます。

年末調整における年収とは、その年の1月1日から12月31日までに会社から支払われた給与収入の総額を指します。この給与収入には、毎月の基本給や賞与(ボーナス)はもちろんのこと、会社が従業員に支払うさまざまな手当も含まれます。具体的には、残業手当(時間外手当)、休日出勤手当、職務手当、家族手当、住宅手当などが該当します。したがって、一年間に支払われた残業代の合計額も、他の給与と同じように課税対象の収入として合算し、年末調整の計算に正しく含める必要があります。

「残業が多いと還付金が減る」は誤解?源泉徴収の仕組み

「残業が多くて年収が上がると、その分税金が増えて年末調整の還付金が減ってしまうのではないか」と心配されることがありますが、これは基本的に誤解です。残業代の多さが、年末調整の還付金を直接的に減らす原因になることはほとんどありません。

その理由は、所得税の徴収方法にあります。会社員の場合、所得税は年末にまとめて支払うのではなく、毎月の給与から概算額が「源泉徴収」という形で天引きされています。この源泉徴収税額は、残業代を含んだその月の総支給額に基づいて決定されています。

つまり、残業が多く給与が増えた月は、その分だけ源泉徴収される所得税額も自動的に多くなっているのです。年末調整は、こうして一年間徴収された税金の合計額と、最終的な年収が確定した後の正確な税額とを比較し、その差額を調整する手続きです。そのため、残業代はすでに毎月の納税額に反映されており、年末調整で還付金が大幅に減るという事態にはなりにくいのです。

 なぜ毎年多忙に?年末調整業務で残業が発生する原因

データで見る「20時間以上」の残業実態

年末調整の時期になると、人事・労務・経理部門の業務量が急増し、多くの担当者が残業を余儀なくされています。これは感覚的なものではなく、実際の調査データによっても裏付けられています。

キヤノンマーケティングジャパン株式会社が実施した調査によると、年末調整業務に携わる担当者の8割以上が、毎年の業務に何らかの課題を感じていると回答しています。また、2023年の年末調整業務のために発生した残業時間については、「20時間以上」と回答した人が28.3%で最も多い結果となりました。平常時と比較して残業時間が「30%以上増えている」と答えた担当者も65%以上にのぼり、この時期の業務負担がいかに大きいかが分かります。このように、年末調整業務は多くの企業において、特定の部署や担当者に負荷が集中し、恒常的な長時間労働の一因となっているのが実情です。

担当者を悩ませる3大要因「書類回収・不備対応・問い合わせ」

年末調整業務で残業が発生する背景には、いくつかの共通した要因が存在します。前述の調査によれば、担当者が残業の主な原因として挙げているのは「書類の再確認・修正作業」(52.1%)、「従業員からの問い合わせ」(46.8%)、「締め切りぎりぎりの書類提出」(46.8%)などです。

これらの原因は、大きく3つの業務に集約できます。一つ目は、従業員からの「書類回収と督促」です。提出が遅れる従業員がいると、その後の作業すべてに遅延が生じます。二つ目は、提出された書類の「不備対応」です。記入漏れや計算間違い、添付書類の不足など、一つ一つの不備を確認し、従業員に差し戻して修正を依頼する作業は、膨大な時間と手間を要します。三つ目は、制度の変更や控除に関する「従業員からの問い合わせ対応」です。これらの業務に追われることで、本来のコア業務が圧迫され、結果として残業時間の増加につながっているのです。

※情報参照元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001101.000013943.html

明日からできる!年末調整業務の残業を減らす3つの解決策

解決策①:業務プロセスの見直しとマニュアル化

年末調整業務の残業を削減するための第一歩は、既存の作業プロセスを見直すことです。実際に、企業の担当者向け調査でも、今後の取り組みとして約半数が「作業プロセスの見直し」を挙げています。まずは、いつまでに誰が何をすべきかという全体のスケジュールと役割分担を明確にしましょう。

特に効果的なのが、従業員向けの分かりやすいマニュアルやFAQ(よくある質問集)を作成し、事前に配布することです。記入例を具体的に示したり、間違いやすいポイントを強調したりすることで、書類の不備を未然に防ぎます。これにより、担当者の手元に書類が届く前の段階でミスが減り、差し戻しや修正依頼といった手のかかる作業を大幅に削減できます。また、問い合わせ内容の多くは共通しているため、FAQで自己解決を促すことで、担当者が個別の質問対応に追われる時間を減らす効果も期待できます。

解決策②:システムの改善・導入でアナログ作業を撲滅

紙の申告書を用いたアナログな業務プロセスは、非効率とミスの温床となりがちです。調査でも、今後の取り組みとして「システムの改善・導入」を検討する声が最も多く、約半数を占めています。年末調整システムを導入すれば、業務の自動化・効率化を一気に進めることが可能です。

システムを導入すると、従業員はスマートフォンやPCから直接申告内容を入力できるようになります。手書きによる判読不能な文字や記入ミスがなくなり、控除額なども自動で計算されるため、担当者のチェック作業の負担が劇的に軽減されます。また、保険料控除証明書などの添付書類もデータでアップロードできるシステムなら、書類の紛失リスクもなくなり、管理が容易になります。このようなアナログ作業からの脱却は、残業時間削減に直結する最も効果的な手段の一つと言えるでしょう。

解決策③:外部サービス(アウトソーシング)の活用も有効な選択肢

社内のリソースだけで年末調整業務を完結させることが難しい場合、専門の外部業者に業務を委託する「アウトソーシング」も有力な選択肢です。調査では、担当者の約3割がアウトソーシングの導入を検討したいと回答しており、その理由として「業務負担の軽減」や「専門知識への期待」「ミスの減少」を挙げています。

アウトソーシングを活用すれば、申告書の受付から内容のチェック、データ化、不備があった際の従業員への問い合わせまで、一連の煩雑な作業を専門のスタッフに任せることができます。これにより、担当者は年末の繁忙期にコア業務を中断されることなく、本来の業務に集中できます。また、毎年のように行われる法改正にも専門家が正確に対応してくれるため、コンプライアンスの観点からも安心感が高まるという大きなメリットがあります。

年末調整と残業に関するQ&A

注意すべきは還付金より「社会保険料」への影響

残業代が年末調整の還付金額に与える影響は限定的ですが、一方で「社会保険料」には大きく影響する可能性があるため注意が必要です。社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)は、毎月の給与額そのものではなく「標準報酬月額」という基準を基に計算されます。

この標準報酬月額は、毎年4月、5月、6月に支払われた給与(残業代を含む)の平均額によって決定され、その年の9月から翌年8月までの社会保険料に適用されます。つまり、年度末の繁忙期などにあたる4月から6月の間に残業が増え、給与が多くなると標準報酬月額の等級が上がり、月々に天引きされる社会保険料が高くなる可能性があります。この仕組みが、「残業をすると手取りが減る」と感じる場合がある一因です。年末調整の所得税だけでなく、社会保険料の仕組みも理解しておくことが重要です。

未払いの残業代を受け取った場合の年末調整はどうなる?

過去に支払われるべきだった未払いの残業代が、後日まとめて支払われた場合、その取り扱いには注意が必要です。年末調整の時期に源泉徴収が行われずに支払われると、還付金が減ったり、場合によっては追加で税金を納める(追徴)必要が出たりすることもあります。

このような未払い残業代の税務上の処理には、主に二つの方法があります。一つは、支払いが確定した年の「一時金(賞与など)」として扱う方法です。この場合、従業員は過去の年末調整をやり直す必要はありませんが、その年の所得が一時的に大きく増えるため、所得税や翌年の住民税の負担が大きくなる可能性があります。もう一つは、本来支払われるべきだった「過去の各年分の給与」として修正する方法です。この場合、会社は過去の年末調整を再計算し、従業員も必要に応じて修正申告を行う手間が発生しますが、所得が各年に分散されるため、結果的に手取り額が多くなる可能性があります。

年末調整の「書類作成」は残業時間(労働時間)になる?

従業員からは「年末調整の書類作成に時間がかかったので、残業として認められますか?」、担当者からは「従業員からの残業申請を認めるべきでしょうか?」といった疑問が寄せられることがあります。この点について法的な観点から見ると、年末調整の書類作成は原則として労働時間には該当しません。

労働時間とは、判例上「使用者の指揮命令下に置かれている時間」と定義されています。年末調整の各種申告書の作成および提出は、所得税法によって定められた従業員本人が国に対して負う義務を履行するための行為です。これは会社の業務命令によって行うものではないため、私的な行為と解釈されます。したがって、従業員が所定労働時間外に書類作成を行ったとしても、会社は残業代を支払う法的な義務はないと考えられます。ただし、企業文化や労使関係性によっては、短時間であれば就業時間内の作成を黙認するなど、実務上の運用は企業によって異なる場合があります。

まとめ

本記事では、年末調整と残業にまつわる様々な疑問について、従業員と企業の担当者、双方の視点から解説しました。

まず基本的な知識として、残業代は年末調整の対象となる年収に含まれます。ただし、残業の多さが還付金に直接大きく影響することは少なく、むしろ影響を注視すべきなのは4月から6月の残業代が基準となる「社会保険料」です。また、未払い残業代の税務処理や、書類作成は原則として労働時間にあたらないといった、具体的なケースについても解説しました。

一方で、企業の担当者にとっては、年末調整業務が深刻な残業問題を引き起こしている実態があります。その主な原因は、書類の回収や不備対応、問い合わせ対応といった煩雑な業務にあります。これらの課題を解決し、業務負担を軽減するためには、「業務プロセスの見直し」「年末調整システムの導入」「アウトソーシングの活用」といった具体的な対策を検討することが重要です。

この記事が、年末調整と残業に関する皆様の疑問を解消し、よりスムーズで効率的な業務の実現に向けた一助となれば幸いです。

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