電子申請義務化は「義務への対応」だけでなく、企業の業務効率化やペーパーレス化を進めるチャンスでもあります。e-Govを通じた社会保険・労働保険の手続きは2020年に始まり、2025年からは労働安全衛生法関連も対象に。本記事では制度の概要から対象法人・手続き一覧、準備すべき電子証明書、そして導入メリットまでを整理しました。
電子申請の義務化とは、2020年4月1日から、特定の法人を対象に社会保険・労働保険に関する一部の手続きを、インターネット経由で電子的に行うことを義務付ける制度です。
これまで多くの企業では、社会保険や労働保険に関する申請・届出を紙の書類で作成し、役所の窓口へ持参するか郵送する方法が一般的でした。
しかし、政府が行政手続きのコスト削減と事業者の生産性向上を目指す方針を打ち出したことを背景に、一部の法人から電子申請が義務化されることになりました。
この制度で利用されるのが、デジタル庁が運営する行政情報のポータルサイト「e-Gov(イーガブ)」です。e-Govは「電子政府の総合窓口」とも呼ばれ、自宅や職場のパソコンから様々な行政手続きを行える仕組みを提供しています。
2020年4月から始まった社会保険・労働保険の手続きに続き、2025年1月1日からは、労働安全衛生関係の一部の手続きにおいても電子申請が義務化されます。
これまでもe-Gov等を通じて任意で電子申請が可能でしたが、今後は対象となる手続きを必ず電子申請で行う必要があります。
今回の義務化で特に大きな変更点となるのが、「労働者死傷病報告」です。
労働災害により労働者が死亡または休業した際に事業者が提出するこの報告書は、報告事項が改正されるとともに、電子申請が必須となります。
その他にも、定期健康診断結果報告書や、ストレスチェックの結果等報告書、安全管理者や産業医の選任報告など、労働安全衛生法に関わる多くの手続きがe-Govや「労働安全衛生法関係の届出・申請等帳票印刷に係る入力支援サービス」を利用して電子申請できます。
社会保険・労働保険手続きの電子申請義務化は、すべての企業に適用されるわけではありません。自社が対象となるか、正確に把握しておくことが重要です。
電子申請が義務化される「特定の法人」とは、以下のいずれかに該当する法人を指します。
なお、これらの法人に該当する場合、手続きを社会保険労務士や社会保険労務士法人が代行しているケースでも、電子申請で行う必要があります。
義務化の対象となるかどうかは、企業の従業員数や事業規模ではなく、資本金等の額によって決まります。
そのため、一般的に中小企業に分類される企業であっても、資本金や出資金の額が1億円を超えていれば、電子申請義務化の対象となりますので注意が必要です。
現時点では、義務化の対象企業が電子申請を行わなかった場合の罰則(罰金など)は定められていません。
しかし、罰則がないからといって対応が不要なわけではありません。電子申請の義務があるにもかかわらず、紙の書類などで手続きを行った場合、その申請は無効なものとして扱われ、事実上受理されない可能性が非常に高いと考えられます。
電子申請が義務化されているのは、社会保険・労働保険の中でも特に利用頻度が高い手続きです。具体的には、以下の手続きが対象となります。
健康保険および厚生年金保険(社会保険)関連では、主に報酬に関する以下の3つの手続きが対象です。
雇用保険関連では、従業員の入退社や異動、給付金申請に関する手続きが対象となります。
また、労働保険料の年度更新に関する以下の申告書も義務化の対象です。
特定の条件下では、電子申請以外の方法が認められる場合があります。主に労働保険関係の手続きにおいて、以下のようなケースが該当します。
義務化された手続きの電子申請を行う方法は、大きく分けて2つあります。それぞれの特徴を理解し、自社に合った方法を選ぶことが大切です。
一つは、政府が運営する「e-Gov(電子政府の総合窓口)」のシステムを利用して、直接申請を行う方法です。
この方法の最大のメリットは、労務管理ソフトなどの導入費用がかからず、コストを抑えられる点です。
一方で、申請データの進捗状況が分かりにくかったり、従業員ごとに情報を手入力する必要があったりと、操作に手間がかかるという側面もあります。初めて利用する場合は、専用アプリケーションのインストールやパソコンの環境設定なども必要です。
もう一つは、e-GovとAPIで連携する民間の労務管理ソフトウェアなどを利用して申請する方法です。
現在利用している人事・給与システムとデータを連携させることで、申請書類を自動で作成できるため、手入力の手間や記入ミスを大幅に削減できます。申請データの作成から進捗管理、公文書の取得までをソフトウェア上で一元管理できるため、業務負担の軽減につながります。
ただし、ソフトウェアの導入や利用にコストがかかる点がデメリットです。自社の手続きの量や頻度、かけられるコストを考慮し、どちらの方法が適しているか検討するとよいでしょう。
電子申請へスムーズに移行するためには、いくつかの事前準備が必要です。特に、申請に必須となる「電子証明書」の取得には時間がかかる場合があるため、早めに準備を始めましょう。
電子申請を行うには、申請データが改ざんされておらず、確かに本人(法人)が作成したものであることを証明するための「電子証明書」が必ず必要になります。これはe-Govから直接申請する場合でも、API連携ソフトを利用する場合でも同様です。
電子証明書は、e-Govのサイトで紹介されているような認証局で発行手続きを行います。発行には手数料が必要で、取得までに日数を要する場合があるため、事前に所轄の行政機関や認証局に問い合わせておくとよいでしょう。
電子申請に慣れていないうちは、従来の紙での申請よりも時間がかかってしまう可能性があります。
特にe-Govを直接利用する場合は、パソコンの環境確認やブラウザ設定、専用アプリケーションのインストールといった利用環境の整備が必要です。また、電子証明書の取得手続きにも時間がかかります。
申請を提出してから審査が完了するまでにも一定の期間を要するため、手続きの期限から逆算し、余裕を持ったスケジュールで準備を進めることが大切です。
電子申請への対応は義務であると同時に、企業にとって業務を効率化する良い機会にもなります。主なメリットとして以下の4点が挙げられます。
電子申請はインターネット環境さえあれば、24時間365日いつでも手続きが可能です。
申請書類を提出するために役所の窓口まで出向く必要がなくなるため、担当者の移動時間や交通費といったコストを削減できます。
手書きの書類作成が不要になるため、書き間違いや読み間違いといったヒューマンエラーを防ぐことができます。特にAPI連携ソフトを利用すれば、既存の人事・給与データから必要な情報を自動で転記できるため、入力の手間が省けるだけでなく、データの正確性も向上します。これにより、担当者は申請業務にかかっていた時間を他のコア業務に充てられるようになります。
申請書類を紙で管理する場合、紛失や盗難、第三者による意図しない閲覧など、常に情報漏洩のリスクが伴います。
電子申請では手続きがオンラインで完結するため、書類の物理的な移動がなくなり、部外者の目に触れる機会を減らすことができます。結果として、個人情報などの重要な情報をより安全に取り扱うことが可能になります。
e-Govなどを利用した電子申請の義務化は、資本金1億円を超える法人などを対象に、社会保険・労働保険の主要な手続きで適用されています。
2025年1月からは「労働者死傷病報告」など労働安全衛生法関連の手続きも対象に加わるため、該当する企業は確実な対応が必要です。
義務化対象であるにもかかわらず電子申請を行わない場合、申請が受理されない可能性があります。これを機に電子証明書の取得などの準備を進め、自社に合った方法で電子申請へ移行しましょう。
この変更は、単なる義務への対応に留まらず、ペーパーレス化の推進や業務効率の改善、セキュリティ強化を実現する絶好の機会と捉えることができます。
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